世の中のことを考える(2008年1月-9月)

2008年1月 これから必要な人材は、複数の得意分野を持つ人

121日「グローバル企業の成功戦略」著者、MIT(マサチューセッツ工科大学)スザンヌ・バーガー政治学部教授の講演「グローバライゼーションの最先端」をセミナーで聞きました。500を越える世界の企業にヒアリングした結果を踏まえた“成功する企業の条件〜グローバル経済において最先端企業はいかに競争力を高めているか”という内容で、企業がが今後も社会に貢献し続けるにはどのような人材が必要となるかを考えさせられる興味深いお話しでした。

まずはアメリカ、企業はコスト削減のために何でもかんでもアウトソーシング(OS)してしまった結果、企業本体には何にも残っていない、という風刺漫画が出るほどにアメリカ企業でのOS化は進んでいるのですが、問題はその結果どのような新しい仕事や雇用がアメリカで創出できたのか、という点にバーガー教授は着目しています。企業にとっての業務プロセスの外部化には二種類あって、@自社のリソースを全世界展開する A外部企業に業務委託する @、Aいずれの場合にも場合によっては国内雇用をある程度確保したまま可能ですが、コストだけを考えればどうしても海外への雇用移転となります。教授によると「良い企業」といわれる会社は全企業プロセスを全世界に展開、効率よく水平(企業内業務)垂直(サプライチェーンも含めて)プロセスの再構成ができている会社、ということでした。

 アメリカにとっての)良い例としてあげられたのが224ドルで販売されているiPod。約400のコンポーネントで構成され、付加価値にして3ドル分が中国で、80ドルが日本、120ドルが米国Apple社で創出されているということで、市場ニーズをいち早く捕まえるためのR&Dから製品化までのスピードアップを、進化するデジタル化技術と最適パートナー企業との垂直統合により実現しています。AppleiPodとともにiTunesサービスを提供することで単なるハードウェアのコピーだけではキャッチアップできないビジネスモデルを構築できたことがポイント。安い労働力にのみ頼る海外展開は価格競合を激化させて企業の消耗を招くだけであり、安易な技術移転は競合企業を海外に創出することになる、という指摘。教授からは、徹底したモジュール化と海外垂直統合戦略のDELLと自社技術開発のSamsung、超短期間での市場への製品投入と多品種少量生産のZARAとオリジナル商品の自社開発により中間マージンをおさえたGAPなど「多様化への柔軟性」の例示もあり、それぞれ自社戦略の追求を徹底することで勝ち残ってきた、そして苦しんでもいると指摘。 

また、部品やサービスの一部をモジュール化して自社の強み以外の部分をOS化することの是非について、R&Dと設計にフォーカスしたCISCOApple、会社統合を図ったAlcatel/Lucentの例を引きながら、イノベーションはえてして企業活動の周辺分野から起こるもの、OS化は企業の主軸事業の周辺部に存在する多様性を犠牲にすることから長期的には課題もある、企業統合ではOS化の悪影響も出る、ということを説明。中国にプラント建設をする日本企業と業務委託をすすめる米系企業の今後はこれからの研究課題であるとされました。ここで考えたのは情報システムが行う業務をOS化する日本企業の今後についての課題です。「ITは経営と表裏一体である」といいながら、日本独特の情報システム(IS)部門子会社化やIS業務丸ごとのOS化を進めるとどうなるのか、IS部門のR&D、設計だけを自社の強みとして残すことができるのか、日本企業ではすでに自社SEの多様性が失われてきていてISイノベーションが起こりにくくなっているのではないか、すでに弊害が出てきていて企業はIS部門の再編成を進めているのではないか。SaaS戦略や今後のOSビジネスでの検討課題でしょう。

最後に欧米の企業が中国やインドの研究者と一緒にR&Dを進める場合の成功パターンを調査してみると、欧米の地球の裏側にある夜間作業委託相手としての共同R&Dでは成功していない。中印技術者にも確たるミッションがあり、全研究者一体型のチーム編成が重要とのこと。この際、複数の国で様々な研究者が数多くの分野でR&Dを進めることになり、国を超えて異能のメンバーを統括できる能力、複数の技術分野を理解する文化レベルの高い経営者が必要になってきているとのこと。こうした複合チームが力を発揮できる企業が生き残れるグローバル企業であるということでした。ベトナムやインド企業とのビジネス連携を進めていく上で重要なポイントになると感じます。

 教授によると、グローバル展開企業に必要なのは“Boundary Spanner”、無理矢理訳すと「境界線を越えて多分野の橋渡しができる人」、そういう人材を育成できるかどうかが重要で、エンジニア、経営者、スタッフいずれの職種でも企業の境界線や業種、職種、業界を越える“Boundary Spanner”が必要になってくる、ということでした。多くの日本企業でもインド、ベトナム、中国、タイなどの企業とグローバルなR&D、システム開発、物流、サポートサービス、そして営業展開が必須になっています。企業の社員も社外でのアクティビティへの参画などを活用し、各組織や職種での“Boundary Spanner”を育成していくことがグローバル展開を進めていく日本企業企業に必要になると感じました。

2008年3月 「病気にならないこと」は生活の基本

 最近多くの企業の食堂などで目につくポップ、メタボリック症候群、として取り上げられている生活習慣病に対する健保組合などによる啓発活動です。ウエストサイズ、男性なら85センチ以上、女性は90センチ以上の場合で、血圧が高い(85130以上)、高脂血症(中性脂肪150mg/dl以上など)、高血糖(空腹時血糖値が100mg/dl以上など)のいずれかに該当するとメタボリック症候群と見なされ、度合いを診断、保健指導を行うとしています。政府は健診受診率などにより高齢者医療の支援金を増減する仕組みを導入するので、健康保険組合としても社員の健康管理に真剣になります。生活習慣病はちょっとした注意で予防できると言われています、今年の4月からは健保などによる保健指導が強化されますので、言われる前に対策を考えてみてはどうでしょう。

上記に該当するかどうかは別にして、健康に過ごせることは、仕事をする、充実したプライベート生活を送る、いずれの場合にも基本となります。なかにはすでに障害や持病があり、その障害や持病とつき合いながら仕事や生活を組み立てなければならない方もおられるので一概には言えませんが、あらたな病気にならないように過ごす、ということはどのような方にも当てはまる重要なポイントではないでしょうか。

会社の仕事を進める上でも、同じ部署やプロジェクトに病人が出るとプロジェクトの生産性が落ちるので、組織長にとってメンバーの健康管理は立派な仕事の一つといえます。上記で話題になる生活習慣病のどれかになってしまえば仕事や生活に支障が出て家族や同僚にも迷惑がかかりますので、生活習慣病にならないことは通常の生活や仕事を今まで通りに続ける上で重要な要件といえます。「やる気」をもって仕事をすることは重要、とよく言われますが、健康であること、病気にならないことは仕事でも個人生活でも最も基本的な要件であり、健康はやる気の源泉、とも言えるのではないでしょうか。このように考えると、仕事もプライベートも充実させたいというワークライフバランスの基本も健康あってのこと、と考えることができます。「病気にならない生き方」という本もあるので、気になる方はそちらを参照いただければと思いますが、この本にも書かれているポイントはバランスの良い食事と適度な運動です。

食事と運動、いずれもプライベートなことなので他人にとやかく言われたくはないのですが、生活習慣病の予防であり、仕事のパフォーマンスやプロジェクトの生産性にも関係するとあれば、個人の内臓脂肪の量やウエストサイズという個人情報を健康管理組合が管理することに対しても、抵抗してばかりはいられない、と考えた方が良いのではないでしょうか。

食事に関してよく言われていることは「野菜と魚中心に腹八分目」、運動は「毎日続けられる有酸素運動」、どちらも毎日続けることが重要です。食事、運動量と肥満には単純な関係があり40歳男性で身長が170cm体重65Kgの場合、摂取カロリーにして一日2000Kcal程度が事務系サラリーマンの適量といわれています。

食事と運動について具体的には毎日何ができるのでしょう。

     食事:三食をバランス良く摂ることだといわれています。多くのサラリーマンの問題は夕食と飲酒。朝食昼食をそれぞれ600-700Kcal摂ったとすると夕食に摂れるエネルギーは700Kcalが限度、中ジョッキ350cc150Kcal、串カツなど食べると一本で240Kcal、ピザは一切れで450Kcal、もうオーバーです。「もういいよ」とここで切れないでください。ちょっとした工夫で結構飲み食いできるのです。焼酎にすれば生の100cc150Kcal、鯵のたたきならひと皿100Kcal、ひじきの煮物ならひと皿80Kcal、もづくならいくら食べてもタレの数Kcalです。飲み会の場所選びを和食健康路線に変更すればカロリーもだいぶ違ってくるかも知れません。

     運動:激しい運動を週末だけやるよりも、平日もできる「歩き」はいかがでしょう。目標は一日一万歩、これで330Kcal、わずかですが、毎日続ければご飯にして一杯半、焼酎が2杯余計に飲めます。一つ手前の駅で降りて歩くとして、たとえば会社まで30分、1100歩とするとこれで3000歩、朝がつらければ帰りはどうでしょう。エレベータ待ちでいらいらする方、上なら二階、下なら五階くらいは歩いてみたらどうでしょう、一階分で20段程度ですので2Up-5Down40-100歩です。

     計測:体重と血圧を毎日計測することは重要です。できればメモをとって家族の分も計ってあげたらいかがでしょう。Wii FITを買って家族で楽しむという手もあります。毎日計測しノートに付けるだけでダイエットに成功した方は多いと聞きます。まずは現実を見つめることが重要で、計測するだけでも生活習慣病予防に効果があると言われています。

メタボリックなんて自分には関係ない、営業職なのでそのようなことは無理、人生楽しく生きたいので我慢はしない、もう手遅れ、などなどいろいろな方がおられると思いますが、病気にならないことは誰にでも関係があり、職種にかかわらずできることはあります。人生楽しく生きるためにあらたに病気にならないことは大切で、もう手遅れということはないと思います。

病気にならない生き方、進めてみませんか。

2008年3月 「住む場所は自由」という時代

原油の価格が上がり米国ではガソリンの値段が1ガロン(約3.8リットル)4ドルをうかがっています。2000年には1ガロン1ドル程度でしたのでここ8年で4倍、通勤は車、という米国ではこれが庶民の財布を直撃、防衛策の一つとして浮上しているのが在宅勤務、という話です。

在宅勤務はIBMなどの民間企業では10年以上前から導入され、部門によっては同じ部署のメンバーがバラバラの場所で働く、ということが当たり前になっているそうです。米国では官庁を対象に在宅勤務(英語ではstay-home workとかtelework)を推進する法律を200010月に施行、各省庁にtelework実施を義務づけています。連邦政府がtelework推進をする理由は次の通りです。(日本テレワーク協会資料より)

1.交通混雑緩和(ワシントンDC等都市近辺の渋滞緩和)
2.環境問題への対応(排気ガス削減)
3.公共工事の削減(あらたな道路や橋は連邦政府の仕事)
4.危機管理対策(9.11以降の業務継続対応)
5.ファシリティコスト削減(オフィス費用)
6.人材確保(民間企業に見劣りがしない労働環境)

2003年時点の統計データによると、telework対象者のうち実際にteleworkしている方の比率は一番多い「社会保険庁」で37%、一番低い農業省では5%と低調だったのが、日本テレワーク協会によるとこの1年で一気に増えているとのこと。ガソリン代の値上げにあわせて環境意識が高まってきていることもあるのかもしれません。

米国でのtelework進行の話しを聞いていると、単に家で勤務をする、というところから自宅はオフィス所在地と無関係になってきている、というあらたなステージに移ろうとしているようです。もともと米国での通勤距離は長く、ボストンにあるGSA(連邦調達庁)に勤務する職員の通勤距離は20マイル以下が30.5%21-40マイルが26.2%41-60マイルが19.4%61-80マイルが8.2%、そして80マイル以上が15.5%日本テレワーク協会資料)。80マイルといえば130Kmですから、高速道路とはいえ静岡、佐久、いわきあたりから毎日通勤するようなもの。渋滞を考えると半数以上の職員が1時間以上車に閉じこめられて、運転するのは自分ですから本も新聞も読めずに通勤していることになります。実際今では自宅はフロリダ、勤務はボストンなどという人も増えているとか。渋滞の激しいボストン近郊に住むのをやめて自分の好きな場所に家を建てて週に一度はオフィスに顔を出す、という生活転換にも頷けます。

日本では通勤通学があるので自宅は比較的駅のそば、というのが一般的だと思いますが、ITツールが働く人の「住む場所」を変えてしまう日は遠くないかも知れません。

2008年6月 月尾嘉男さんの話「環境問題は人口とエネルギー問題」

 月尾嘉男先生の「環境危機への処方―挑戦する技術と精神」の講演を聞きました。

77日から3日間洞爺湖サミットが開催されますが、環境問題はハイリゲンダムサミットからの政治的話題です。地球は太陽系第三惑星で第二惑星の金星の地表平均温度は464℃、第四惑星の火星の地表平均温度は−63℃、地球は平均15℃、表面の70.8%を水で覆われた稀な環境であり、46億年前に惑星として誕生し、数億年前には生物が、600万年前に人類が登場しました。46億年を一年のカレンダーに喩えると人類の誕生は1231日の16:00に猿人、20:00に原人、23:30にネアンデルタール人を含む旧人、23:58に現在のホモサピエンスに近いと言われる新人が登場するということになり、人類の地球歴史上の存在期間は本当にわずかな時間だということが分かると思います。

1万年前に600万人だった人類の人口は現在では67億人で約1000倍、使う熱量は1万年前が2500Kcal/日、現在は25Kcal/日で100倍になっており、人口X熱量では10万倍、これが環境問題を引き起こしていると考えられ、環境問題は人口問題とエネルギー問題だと思います。人類は数多くの資源を地球から収奪してきています。

     鉱物資源の残存年数 金15年 鉛251572030 Bi36Ni45Cd29Mo44Mn90
     化石燃料の残存年数 石油40年天然ガス67年石炭192年ウラン85
     森林資源 世界で2000-2005年の間毎年732haの森林が消滅、この速度で行けば540年で計算上森林はゼロになる。
     生命資源 ほ乳類の種の23%、両生類の種19%が絶滅に瀕している。
     淡水資源 農業用水利用により黄河が枯渇、下流まで水が流れていない。アラル海は世界第4の淡水湖だったのが今はほとんど干上がっている。チャド湖も同様、流れ込む川の水を農業用水として利用するため湖まで水が流れてこないというのが現状。地球の水の淡水は全体の3%、うち7割が氷河、3割は地下、0.0088%が利用可能となっている。現在世界の18%の人口は安全な水を入手できていないが、2050年には人口が90億人になり70億人は安全な水を入手できない計算になる。
     気象変化 直近40年で0.8℃気温が上昇、自然災害が多発、氷河が消滅、保険支払金額は2004年の災害に対して1980年の7.9倍に達している。

 食糧、資源生産、社会基盤それぞれから一人に必要な面積を算出すると日本は4.4ha必要なのに実際には0.7haしかなく世界では2.2ha必要なのに1.8haしかないのが現状、人口にして48億人が地球のバランスポイントであり、すでにそれを超えていて地球としての許容限界がきているのです。1950年から2005年の50年、人口増が2.5倍、この人口増を支えるために食料生産は3.2倍、肉生産は6倍、漁業生産が6.7倍、航空輸送量が60倍、経済は9倍、鉄生産は5.9倍、アルミ生産が21倍、石油生産は8倍になっています。その結果この50年でCO2排出量は4.6倍になりました。だからといって1950年以前の生活水準にもどって不便を強いられ、経済活動も縮小させることは現実的ではありません。生活水準は維持向上させながら資源消費は減らしていく、つまり節約すると言うことになります。

 電化製品のエネルギー効率は向上しており、同一の仕様で1980年を100消費していたとすると2005年には41しか消費しなくなっています。効率で言えばTV4.8倍、洗濯機は2.7倍、冷蔵庫は2.6倍、白熱灯から蛍光灯への切り替えで3.8倍です。通信技術の発達により、移動をせずに用を済ませることができます。新聞配達のかわりに電子新聞、本が電子ブック、情報技術活用で在宅勤務、ITS、電子取引などが可能になりました。

 リサイクルの徹底ではアルミを鉱石から製錬するのに比べ再利用するとエネルギー面で25倍効率的にできます。金やプラチナは「Urban Mining」という言葉があるように廃棄PCや携帯電話からの再利用が進んでいます。大量生産大量廃棄の時代から注文生産個別廃棄の時代になったといえます。

 地産地消(地域生産地域消費:地域で生産された農水産物を地域で消費すること)も進めていく必要があります。エネルギー資源高騰で食料、穀物、木材など多くの物価が上昇していますが、これをフードマイレージ(重量ton×距離km。食品の生産地と消費地が近ければフードマイレージは小さくなり、遠くから食料を運んでくると大きくなる)で考えてみると日本は世界一フードマイレージが大きく9002kmton、米国は2958kmton。同じ考え方で木材をとらえると日本のウッドマイレージは384kmで、米国の4.6倍、ドイツの21倍にもなる。ウォーターマイレッジでは日本は11億本を輸入していて地産地消的にはとんでもない国と言うことになります。

日本ができることはなんでしょうか。まずは精神構造の変革とでも言う昔の良さを取り戻すことを考えたらどうかと提案します。セントラルヒーティングではなく、こたつと湯たんぽ、貸本や銭湯の復活も良いかもしれません。運河と船による輸送も見直しができるでしょう。李 御寧(イー・オリョン)さん著の「縮み志向の日本人」というベストセラーがありましたが、茶道、盆栽、風呂敷、俳句、すべて日本人の良さが小さくまとめられた世界に閉じこめられています。広い迎賓館で接客しなくても、狭い茶室でお客様を接待する、部屋には畳と座布団で広い応接間に大きな家具や絨毯はいらないのです。茶道で茶碗には宇宙が透視できると言われ、木火土金水という宇宙の五元素が茶道をとおして感じられるという、これが茶道の宇宙観です。環境推進は和の道復活からできるのではないでしょうか。』

以上が月尾先生の講演内容です。数字を多く紹介し具体的でわかりやすい講演だったと思います。

 電化製品の効率が上がった、という話がありましたが、昔見ていたTVはブラウン管20インチで消費電力は80w、今は液晶45インチの大画面なので300w、画面単位面積あたりの効率は良くなっていても消費電力は結果として増えています。また冷蔵庫も1980年頃は200L程度ですませていたのが今では400L以上の冷蔵庫も珍しくありません。洗濯機も今は縦型ドラム式、車はナビ付きが当たり前で、家では各部屋にエアコン、冬は床暖房などなど、1980年に比べるとずいぶん贅沢になっています。これらを我慢してコタツと湯たんぽに戻るというのは、話としては分かるが自分でやるというのは難しいと思います。中国やインドの人たちはこれからの25年、私たち日本人が蒙ってきたような電化の恩恵にあずかろうとしているのに、環境問題があるので我慢しなさいとは言いにくいものです。

 環境問題は月尾先生のおっしゃるように人口問題であり資源問題ですので、解決には国際政治力が必要です。洞爺湖サミットは日本の外交力、政治力とリーダシップ発揮の一大チャンスのはずです。なんとか国としての具体的目標値を公表しリーダシップを発揮してほしいと思います。

2008年6月 大人が知る必要がある「プロフ」と「裏サイト」のこと

最近e-ネットキャラバンという団体の活動に協力しています。内容は携帯電話とインターネットの使い方を子供たちとその保護者、学校の先生たちに正しく伝えよう、という啓発活動です。活動を通して先生や保護者の皆さんの話を聞いていると次のことが分かってきました。

1.携帯とインターネットについてあまりに知識がない大人、先生が多い。
2.子供たちは生まれたときから携帯、インターネットがあり、使うことは当たり前。
3.携帯電話パケット使い放題の料金体系に移行した2006年ころが問題深刻化の始まり。
4.学校は携帯持ち込み禁止としたいが「子供に持たせたい」との要請を断り切れない。
5.学校裏サイトは必ずあるがゲリラ的で先生には見つけられない、ほとんどの中高生はプロフをやっている。
6.携帯を与えられた子供たちは使い方やガイドラインを親からほとんど教わっていない。

プロフ最大手は前略プロフィール、本人確認が甘くなりすましも容易なため、いじめのツールとして使われたり、プリクラの携帯版としか考えていない女子高校生が犯罪に巻き込まれるきっかけにもなると懸念されます。検索ツールで「プロフ」「裏サイト」で検索してみてください、事件、事故、関連報道、ブログなど大変な量の情報が検索されます。また、テレビ番組「ガイヤの夜明け」でも520ネットの闇 〜有害サイトから家族を守れ〜というタイトルで紹介されたのでご覧になった方は多いと思いますが、携帯やインターネットの向こう側には大変な闇が広がっていて、それにやっと多くの大人たちも気がつき始めた、という内容です。

高校生が被害者になった事件が続いているのですが、プロフやそれに類する掲示板が犯罪の温床になっていないのかが気になるところです。携帯電話における未成年者のインターネットアクセスに一定の制限をかける動きがあり、昨年政府からの要請を受け、携帯電話・PHS事業者は未成年者へのフィルタリングサービス原則導入を相次いで発表。親権者が「フィルタリング不要」とキャリアに申し出ない限り、未成年者の携帯電話からはアダルトコンテンツや自殺希望者を募るサイト、コミュニティーサイト、掲示板などにアクセスできなくなるという内容です。

フィルタリングにより、多くの10歳代ユーザのアクセスができなくなるサイトの運営業者は制限緩和を求めていますので、どう決着するのかは不明な部分はありますが、出会い系サイトに関連した事件は07年上半期で907件あり、被害者708人のうち18歳未満の児童が85%、うち女子が99.5%だったと報道されており、子供たちを事件や事故から守るためにはある程度の制限は必要と感じます。国会では小中学生の携帯電話保有制限についての議論もされているのはご存じの通りです。皆さんのお子さんも心配ではないですか。お子さんの名前、学校名、住所、血液型などでプロフサイトの定期的なチェックが必要かもしれません。出てくる検索結果をみると、登録している本人が無邪気にプリクラ感覚で顔をだしていて、大人をぞっとさせます。夜、子供が自分の部屋で、ベッドの中で携帯片手に何をしているのか確認が必要かもしれません。

学校や塾の帰りの子供たちが心配なので携帯電話を持たせたい、という保護者は多いのですが、子供たちは正しい携帯とメールの使い方、インターネットの危険性などを教えてもらえなければ与えられた携帯電話でどんなことをするか分からない、という状態になります。携帯を与える保護者の責任としては、最低限の携帯電話とメールの使用ガイドラインを子供たちに教える義務があります。ITは私たちの生活を便利にしましたが、ITの陰の部分があることを認識することも必要です。

 


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