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2003年以降に18校で創設された「会計大学院」(アカウンティングスクール)であるが、6校が募集停止あるいは募集停止予定である。2007年度以降、定員に対する入学者の割合が1を切るいわゆる定員割れが続く。2016年7月12日には最初に会計大学院を設立した中央大学が、大学院国際会計研究科(専門職大学院)の2017年度以降の学生募集停止を発表した。
公認会計士試験の願書出願者は、2010年度には25,648人であったが、2016年度では10,256人にまで減少している。2016年度は、短答式出願者が2015年度比168人増加したが、その増加数は少なく、今後の動向を注視する必要がある。日本公認会計士協会と会計大学院協会が公表した「会計専門職人材調査に関する報告書」は主たる要因として25歳未満の出願者減少によるものと分析している。また、受験予備校は、途中で公認会計士受験を諦める者が増えている点を指摘している。
税理士試験の2016年度の受験者数は35,589人で、2005年度の56,314人に比べて、20,725人36.8%減となっている。公認会計士試験と異なり、2016年度も受験者数が下げ止まっていない。特に2016年度の25歳以下の受験者数が4,451人全体の12.5%に止まり、25歳以下の受験者減少が顕著である。2017年度の速報値でも受験申込者数が2016年度比3,802人減となっており、2017年度も実質受験者の減少が予想されている。
日本商工会議所簿記検定試験ののべ受験者は、2005年度に1級37,908人、2級195,095人、3級322,300人から、2015年度に1級22,152人、2級229,373人、3級325,120人と、2級3級の受験者は増加しているものの、1級の受験者減少が著しい。日本商工会議所は年齢分布を公表していないので、1級の受験者減少が25歳以下(未満)の受験者減少によるものかは不明である。なお、2級、3級が若干増加しているのは、2016年度からの出題範囲の変更に伴う駆け込み受験の影響である。これらに対して、日本商工会議所は、「日商簿記-1グランプリ」や簿記初級の実施等の施策を実行しており、今後の動向が注目されている。
商業高等学校で学ぶ生徒数は、2016年5月現在194,328人で、2006年5月の247,432人から53,104人、21.5%減少している。
大学については包括的なデータは見当たらない。「会計学科」を設置している大学は、専修大学商学部、拓殖大学商学部、中央大学商学部、日本大学商学部、明治大学経営学部、近畿大学経営学部の6大学であるが、偏差値の低下傾向が見られる。
以上の状況から若干の推測も含めて考察されるのは、
①会計を学ぼうとする若者が減少している点
②高度な会計知識を目指す者が減少している点
である。
この点が会計・税務人財不足の本質的課題である。
①公認会計士を目指しても就職できないという誤解
公認会計士試験の新試験制度採用により、2007年には4,041人の合格者が出たが、監査法人が採用を絞り込んだ結果、公認会計士試験に合格しても就職できない就職浪人が多数出て、そのことがマスコミで報道された。その結果、公認会計士を目指しても就職できないという誤解が社会に浸透してしまった。現在は逆に公認会計士不足になっているにも関わらず、インターネット上には当時の報道が未だに残り、オープンキャンパスでも「公認会計士試験に合格しても就職できないのではないか」という保護者(生徒ではない)からの質問が多い。
②AI(人工頭脳)が進化すると会計業務がなくなるという発表
③会計基準の複雑化
2000年からの「会計ビックバン」、国際会計基準(IFRS)により、会計基準、会計処理が複雑化し、上場会社水準以上(日本商工会議所簿記検定試験1級、税理士試験、公認会計士試験)の会計を学修しようとすると範囲が拡大、難易度が上昇し、最初から会計の学修を諦めてしまう者、途中で諦めてしまう者が増えている。
また、2016年度から日本商工会議所簿記検定試験の出題範囲が見直しされた。2級に連結決算や税効果会計等、高度な会計処理が含まれることとなり、相対的に2級の難易度が高くなっていくと推測されている。この結果、受験者がどう動くのか、注目する必要がある。
会計・税務人財要請推進協議会は、議論の成果物として、事務局名による「会計・税務人財育成に関する提案書~「会計離れ」を超えて」を公表致しました。なお、本提案書は、会計税務人財養成推進協議会事務局がまとめたもので、事務局が新たに加えた提案を含み、会計税務人財養成推進協議会としての最終合意を得たものではありません。従って、文責は全て事務局にあります。
「会計・税務人財育成に関する提案書~「会計離れ」を超えて」
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