100円ショップの最大手のダイソーは非上場なので、決算が分かりませんが、キャン・ドゥは上場しているので、財務諸表を見ることができます。2016年11月期では、当期純利益利益11億円、売上高当期純利益率1.6%の利益を出しています。
なぜ、あんなに安いのに利益が出るのでしょうか。理由はいくつかありますが、最も大きい理由は、商品により仕入原価が異なることです。150円や200円で仕入れた商品も100円で売っているし、10円や30円で仕入れた商品も100円で売っています。皆さんも100円ショップに行くと、お目当ての商品以外にも多くの商品を購入してしまったという経験がありませんか。この方法は、ドン・キホーテで行われている「圧縮陳列」と同じで、お客様は予想外のものがあるという発見の楽しみを見出し、思わず購入してしまうのです。このように100円ショップは1個1個ではなく、購入客単位で儲けが出ればよいと考えています。FC加盟店への販売もあるので、多少は売上原価率が高くなっていると予想されますが、キャン・ドゥの場合、平均仕入原価は売価の62.4%(2016年11月期)なので、平均62円で仕入れていることになります。
東京ディズニーリゾートの原価は、減価償却費、人件費等、売上高に関係なく発生する固定費が大部分を占めています。電気代や食材費等、売上高により変動する変動費も発生しますが、固定費に比べると相対的に小さいです。このような固定費型の事業の場合、固定的な料金で固定費をカバーし、食材費のように変動費が大きいサービスのみ変動料金を適用するのが普通です。このような料金形態は電話料金の基本料金と通話料、最近では基本料金とパケット使用料も同じです。
テーマパーク、電話を始めとする固定費型の事業は、固定料金で固定費を一括で回収することにより、その他のサービスの価格を決定する際に変動費のみを考慮すれば良くなります。また東京ディズニーリゾートでは他の店を利用できないので、お土産、飲食等の価格が通常並みあるいは少し高く価格を設定することで、高い利益率を得る事業構造となります。顧客は他を利用できないという点で、これは携帯電話の付加サービスも同じです。固定料金なので、お客は時間を気にせず東京ディズニーリゾートに滞在する結果、飲食等の利用が増えて、儲かる仕組みになっています。従って、東京ディズニーリゾートでは滞在時間を長くして、知らず知らずのうちにお金を使う機会を増やす工夫をしています。
また、固定費をカバーするように固定料金を設定することで、企業側としては経営が安定し、お客様側としては、これ以上追加料金がないという点で相対的に割安感、安心感が得られるので、利用しやすくなり、結果的に利用者が増加することになります。利用者が増加しても、固定費は増えないので、その分がまるまる儲けとなります。しかし、固定価格が設定できるのは、一定の利用者数が見込める結果でもあります。
ラーメンは1杯600円から700円であるが、全国平均の原価率(材料費率)は、30〜35%です。材料にこだわると、材料費率はアップしてしまいます。材料費率がアップすると、それだけ利益は減るあるいは赤字になります。その利益を補うために、沢山のお客に食べてもらう方法がありますが、ラーメン店は昼時にお客が集中し、お客の数は席数という上限があります。そこでラーメン店は、ギョーザのようなオプションやトッピングを増やして、客単価を上げているのです。
一般にギョーザやトッピングの原価率(材料費率)はラーメンよりずっと低く、また売上高に関係なく発生する費用である固定費を既にラーメンで回収していますので、高い(限界)利益がそのまま店の利益になります。ギョーザの原価率(材料費率)は5%〜10%と低い。普通のラーメン屋の場合、ギョーザは350円/皿くらいしますが、冷静に考えて、ラーメンに比べて高いと思いませんか。
もうかるラーメン屋はギョーザをすばやく出し、ラーメンができる前に出します。そうすると、お客様は待ち時間を短縮でき、店側としてはお客様の空き時間にキョーザを食べてもらえるので、客の滞在時間を延ばさずに済みます。すなわち、客単価を上げても、客数を減らさずに済むのです。
このビジネスモデルは、立ち食いそば屋でも同じで、立ち食いそば屋もかけそばだけでは成り立ちません。天ぷら、玉子といったトッピング、おにぎりや稲荷ずしが立ち食いそば屋の利益を支えています。また、牛丼屋も、牛丼だけでは利益が出ず、味噌汁や漬け物、サラダで儲けているのです。
カラオケ屋の1ドリンクオーダー制の30分当たりの料金は安いが、ドリンクの価格は高めで、ドリンクの原価率(材料費率)は5%〜10%。従って、絶対にドリンクバー付が良いです。
カラオケ屋は、フリータイム料金を含めて、カラオケ料金を安くして、ドリンクや料理を頼んでもらい、それらで儲けるのがカラオケ屋のビジネスモデルです。今やカラオケ屋というより、カラオケ付居酒屋に近いです。基本は19時以降で儲ける仕組みですので、昼間は少しでも固定費が回収できれば良いと考えて、料金設定している。これは、喫茶店のモーニングサービス、レストランのランチメニューと基本的に同じです。
なお、少人数よりも多くの人数が歓迎されます。人数が多くなれば、1人当たりの歌う曲数が少なくなり、印税は下がるし、長時間の滞在となって、ドリンクや料理が頼んでもらえる可能性が高まるからです。