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儲けの秘密How to make more profit





M社のチーズバーガー税込み130円は儲かっているのか

実はチーズバーガーは、(総原価ベースでは)赤字と想定されます。その結果、M社はチーズパーカーを売りたくありません。だから店頭の表示にもチーズバーガーの記載はありません。チーズバーガーはM社のファストフードは安いというイメージを与え、お客様をお店に呼ぶ商品なのです。
お客様がお店に来たら、より高いハンバーガーを奨め、さらにはポテトとドリンクのセットを奨めます。そうなると、客単価が600〜700円になり、M社は大儲けです。
詳しく説明しましょう。M社のチーズバーガーは130円、310kcalです。M社にはダブルチーズバーガーという商品があり、これは店頭にも表示されている推奨商品です。価格は320円です。カロリーはチーズとお肉が2枚のって463kcalです。すなわち、チーズバーガーのカロリーは1.5倍にもかかわらず、価格は2.4倍!!!!すなわち、チーズバーガー2個食べた方がずっと得です。
さらにお客様にはセットメニューを奨めます。コーラM単品なら220円、ポテトM単品なら270円で、ダブルチーズバーガーは320円で、全て単品で頼むと810円ですが、セットだと620円になりますので、お客様は190円も得だと思い、セットメニューを頼みます。ここにも儲けの秘密があります。ポテトは海外の農場で集中して工場でカット冷凍して日本に運ばれます。その結果、原価(材料費)は超安いのです。次にドリンクですが、冷静に考えてみましょう。ドリンクには氷が沢山入っています。従って、実際の容量は半分250ml。C社のコーラ1.5Lのペットボトルは150円で買えます。ペットボトルの原価の方が飲料自体の原価より高いので、ペットボトルが不要のC社のコーラの原価の低さがお分かり頂けると思います。M社では値引き後の620円が本当の価格で、コーラM単品220円、ポテトM単品270円、ダブルチーズバーガー320円は値引きをすることを前提に設定されている価格と言ったら、言いすぎでしょうか。
このように、@安いチーズバーガーで「安い」というイメージを与え、お客様を集める、A来店したお客様のメインのハンバーガーを高値誘導する、Bさらにセットで客単価を上げる、これがM社の価格戦略になっています。すばらしい価格戦略だと思います。

屋台の商品の原価(材料費)率は安い

お祭り等に出店している屋台の商品、たこ焼き、わた飴、イカ焼き等あるいはカキ氷の原価(材料費)率は超低いのです。それは大もうけしているからでしょうか。違います。屋台の商品を販売するには多額の設備投資が必要です。お祭りは各所で開催されるので、移動のための自動車が必要です。夜のための照明と発電設備も必要となります。看板やのぼり等もちゃんとしたものが必要となります。また、食品衛生法上の規制もあります。その結果、商品によりますが、最低でも150〜250万円の費用が必要となります。この固定費を回収する必要がありますので、価格を高くせざるを得ない、これが1つ目の理由です。
また、屋台は毎日、開店しているわけではありません。お祭り等が開催しているところを転々としますが、当然、春から秋が多くなります。この結果、屋台が出店しない季節や日々の収入を補う必要があります。つまり儲けられる時に儲けておかないと、儲けられない季節の収入を補填できないのです。これは屋台だけではなく、例えば航空会社でも同じです。航空会社は、お正月、ゴールデンウィーク、夏休み等の特定の期間しか儲かりません。これらの期間の航空運賃は他の期間よりも高く設定されています。同じ理屈で、儲かる特定の期間は航空運賃を高く設定し、他の期間を補填できるくらい儲けているのです。
そして、3つ目の理由ですが、これは原価計算というより、マーケティングの視点です。屋台はお祭りの会場に来てくれているのです。通常の店舗は、顧客が店舗に足を運びます。しかし、屋台はお祭りの会場に来てくれるというサービスを提供しているのです。富士山の山頂の水が高くても皆さんが納得するのと同じ理屈です。また、屋台によってお祭りを盛り上がるという付加価値も提供しているのではないでしょうか。お祭りの時、屋台がなく、お神輿や山車、神事だけが行われてもつまらないですよね。
このように屋台の価格は、原価(材料費)に対して高いですが、「ぼったくり」をしているわけではなく、理由があるのです。

100円ショップの秘密

100円ショップの最大手のダイソーは非上場なので、決算が分かりませんが、キャン・ドゥは上場しているので、財務諸表を見ることができます。2016年11月期では、当期純利益利益11億円、売上高当期純利益率1.6%の利益を出しています。

なぜ、あんなに安いのに利益が出るのでしょうか。理由はいくつかありますが、最も大きい理由は、商品により仕入原価が異なることです。150円や200円で仕入れた商品も100円で売っているし、10円や30円で仕入れた商品も100円で売っています。皆さんも100円ショップに行くと、お目当ての商品以外にも多くの商品を購入してしまったという経験がありませんか。この方法は、ドン・キホーテで行われている「圧縮陳列」と同じで、お客様は予想外のものがあるという発見の楽しみを見出し、思わず購入してしまうのです。このように100円ショップは1個1個ではなく、購入客単位で儲けが出ればよいと考えています。FC加盟店への販売もあるので、多少は売上原価率が高くなっていると予想されますが、キャン・ドゥの場合、平均仕入原価は売価の62.4%(2016年11月期)なので、平均62円で仕入れていることになります。




東京ディズニーリゾートの1デーパスポートはなぜ7,400円の固定料金なのか

東京ディズニーリゾートの原価は、減価償却費、人件費等、売上高に関係なく発生する固定費が大部分を占めています。電気代や食材費等、売上高により変動する変動費も発生しますが、固定費に比べると相対的に小さいです。このような固定費型の事業の場合、固定的な料金で固定費をカバーし、食材費のように変動費が大きいサービスのみ変動料金を適用するのが普通です。このような料金形態は電話料金の基本料金と通話料、最近では基本料金とパケット使用料も同じです。
テーマパーク、電話を始めとする固定費型の事業は、固定料金で固定費を一括で回収することにより、その他のサービスの価格を決定する際に変動費のみを考慮すれば良くなります。また東京ディズニーリゾートでは他の店を利用できないので、お土産、飲食等の価格が通常並みあるいは少し高く価格を設定することで、高い利益率を得る事業構造となります。顧客は他を利用できないという点で、これは携帯電話の付加サービスも同じです。固定料金なので、お客は時間を気にせず東京ディズニーリゾートに滞在する結果、飲食等の利用が増えて、儲かる仕組みになっています。従って、東京ディズニーリゾートでは滞在時間を長くして、知らず知らずのうちにお金を使う機会を増やす工夫をしています。
また、固定費をカバーするように固定料金を設定することで、企業側としては経営が安定し、お客様側としては、これ以上追加料金がないという点で相対的に割安感、安心感が得られるので、利用しやすくなり、結果的に利用者が増加することになります。利用者が増加しても、固定費は増えないので、その分がまるまる儲けとなります。しかし、固定価格が設定できるのは、一定の利用者数が見込める結果でもあります。


なぜラーメン屋のメニューにギョーザがあるのか

ラーメンは1杯600円から700円であるが、全国平均の原価率(材料費率)は、30〜35%です。材料にこだわると、材料費率はアップしてしまいます。材料費率がアップすると、それだけ利益は減るあるいは赤字になります。その利益を補うために、沢山のお客に食べてもらう方法がありますが、ラーメン店は昼時にお客が集中し、お客の数は席数という上限があります。そこでラーメン店は、ギョーザのようなオプションやトッピングを増やして、客単価を上げているのです。
一般にギョーザやトッピングの原価率(材料費率)はラーメンよりずっと低く、また売上高に関係なく発生する費用である固定費を既にラーメンで回収していますので、高い(限界)利益がそのまま店の利益になります。ギョーザの原価率(材料費率)は5%〜10%と低い。普通のラーメン屋の場合、ギョーザは350円/皿くらいしますが、冷静に考えて、ラーメンに比べて高いと思いませんか。
もうかるラーメン屋はギョーザをすばやく出し、ラーメンができる前に出します。そうすると、お客様は待ち時間を短縮でき、店側としてはお客様の空き時間にキョーザを食べてもらえるので、客の滞在時間を延ばさずに済みます。すなわち、客単価を上げても、客数を減らさずに済むのです。
このビジネスモデルは、立ち食いそば屋でも同じで、立ち食いそば屋もかけそばだけでは成り立ちません。天ぷら、玉子といったトッピング、おにぎりや稲荷ずしが立ち食いそば屋の利益を支えています。また、牛丼屋も、牛丼だけでは利益が出ず、味噌汁や漬け物、サラダで儲けているのです。

カラオケ屋はどのように儲けているのか

カラオケ屋の1ドリンクオーダー制の30分当たりの料金は安いが、ドリンクの価格は高めで、ドリンクの原価率(材料費率)は5%〜10%。従って、絶対にドリンクバー付が良いです。
カラオケ屋は、フリータイム料金を含めて、カラオケ料金を安くして、ドリンクや料理を頼んでもらい、それらで儲けるのがカラオケ屋のビジネスモデルです。今やカラオケ屋というより、カラオケ付居酒屋に近いです。基本は19時以降で儲ける仕組みですので、昼間は少しでも固定費が回収できれば良いと考えて、料金設定している。これは、喫茶店のモーニングサービス、レストランのランチメニューと基本的に同じです。

なお、少人数よりも多くの人数が歓迎されます。人数が多くなれば、1人当たりの歌う曲数が少なくなり、印税は下がるし、長時間の滞在となって、ドリンクや料理が頼んでもらえる可能性が高まるからです。



儲けの仕組みがわかる、原価計算・管理会計を学びましょう。

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