奈良見仏2日目(亜紀編)


●01年5月4日金曜日祝日。

奈良公園近くのホテル「白鳳」に泊まって奈良見仏2日目。晴天。 この日は新薬師寺→東大寺→興福寺を歩いてまわる計画。 京都と違って、奈良はなんか田舎っぽくてのんびりしていて、私は好きだね。 MTBによる見仏は、京都より向いてるかも。


 
 ●新薬師寺 (静かな住宅街の中に突如現れる。寺が先にあったんだろうけど。) 
新薬師寺は奈良公園南東のはずれにあり、私たちは奈良中心地のホテルから、 鹿と遭遇しながら奈良公園を抜け、ややきつい上り坂を登って数十分の道のりを歩いた。
まず特筆すべきは、「見仏記」にも書いてあるけど、 パンフレットに書いてある、キャッチフレーズです。なんと、 「東洋のギリシャ」ですよ。東洋のギリシャ彫刻とか、限定されているならまだしも、 「ギリシャ」ですからねー。「西洋の日本」と言っているのと同じです。
奈良公園の鹿の残党が、公園はずれのやぶの中に数匹現れたり、 一般市民の生活のかいま見える、のどかな住宅街の細道を歩いている限りでは、 どこから見てもここは日本である。新薬師寺の境内だって、建物だって、 どこにもギリシャを思わせる所はないな。
次に特筆したいのは、猫である。何本か白髪のまざった黒猫。 拝観料を払う列に並んでいたら、ひょっこり現れて、境内に入っていった。 しっぽをつかんで引っ張ると、「にゃー」と一言鳴くだけだ。 その落ち着いた性格と、がっちりした体格、きれいな毛並みを見るや、 新薬師寺の主であるに違いない。猫好きの私には、たまらんお出迎えである。
そしてやっと本題。「見仏記」では、 仏像メリーゴーランドと称される、円形須弥壇上に塑像の十二神将がおられる。 さすがに、みうら、いとう氏のようにぐるぐる走っての見仏はできなかった。 我々もまだまだだ。わずかに残る色とりどりの彩色や、細かい模様から想像するに、 出来たての頃は、それはそれは絢爛豪華な十二神将であったに違いないと思われた。 作りの細かさも、とても塑像とは思えない出来映えである。 ちなみにそれぞれの十二神将は、干支をつかさどっているのだが、 500円切手を飾ったバサラ殿は、私の干支(戌)である。
その十二神将を従え、真中に居座る薬師如来坐像。 十二神将の鬼のような顔と違って、なんか庶民的で横幅のあるやさしいお顔。 親近感と安心感が沸いてくる不思議な魅力の仏だった。
 ●東大寺 (奈良と言えば法隆寺に続いて、やっぱ東大寺)  
 三月堂 (法華堂) みうらさんが寝たという畳があるが、人がいっぱいで座れなかった。 しかも居座っててなかなか空かない。まーいいけど。 仏は目白押しで、もちろん見る価値大有りなんだけど、 空間としての統一感が今一つですね。それもそのはず、 仏の造られた時代がいろいろなのだそうで。 一般には門の両脇を守っている金剛力士も、 この寄せ集め立体曼荼羅の中にいたりする。 真ん中の存在感のある太目の不空羂索観音はさすがに圧巻だったが、 その両脇時の日光・月光がなんかぬぼーっとつっ立てる。 帝釈天と梵天も、やたらでかいんだけど、ぬぼーっとしてて躍動感がない。 すごい格好と形相の仏達と、冷めた無表情の直立仏達が混在するので、 見る方もそのギャップに感情が上下してしまい、少々疲れる。 だから畳があるのかな?やっぱり仏の住む建物そのものや、 仏の配置や大きさなどの統一感も、とても大切な要素ですね。 なんとか展とかいって、都会に出張してきた仏達が、 薄暗く不自然な色でライトアップされてそれらしく置かれてたって、 今一つ臨場感得られないのと同じで…。
 大仏殿 いやーほんとうにでっかいですね。大きさに関してはかなり満足。 でもでかいゆえか、これでもかなり緻密なんだろうけど、味気ない気がした。 金属製だからかな。つまり彫ったり削ったりして造るわけじゃないから、 表面肌つるつるで、冷たい感じがしたなー。 その点、両脇時の方が味があった。 写真が撮り放題なのはいいですね。 今までこんだけ仏みてきて、1枚も仏の写真なかったから。 これで見仏したっていう証拠写真が得られたわけで。
 戒壇院 みうらさんが日本一男前の四天王というとおり!。 男らしいキリッとした顔つきに、キュッとひきしまった女性的な体に白い肌。 このアンバランスさ。惚れるわー。思わずときめいて赤面している自分に気づいて、 びっくりしてしまう。単なる煩悩の塊と化した私。 空間の使い方がなんか贅沢ですなー。 仏目白押しじゃないのに、じっくり鑑賞できるすばらしいできの四天王だ。 新薬師寺の塑像よりもさらに繊細である。踏まれている邪気も表情が豊かで、 なんかかわいらしい。
 ●興福寺 (良い仏揃ってます。本当にたくさん目白押し。)  
 東金堂 十二神将かなり期待してたのに、前から見ると仏達が重なり合って、 奥の仏は良く見えない。さらにここも横からの見仏ができなかった。 置き方がいいかげんとさえ思えるんだけど? ここの日光・月光さん、色っぽいんです。なんか胸がこころなしか、 かすかに膨らんでるように見えて。
 国宝館 いやーここはね、すごいよ。すごい人達でいっぱいだもの。 主役ばかり。まず仏頭。思ったよりでっかくてびっくり。 山田寺から強奪したにしては、でか過ぎるね。 でも金属の台に継ぎ目ないように固定されていて、なんだか現代彫刻みたい。  上半身はだかのあうん金剛力士。美しい。筋肉隆々。 頭には血管浮き出てます。力入ります。 天燈鬼・龍燈鬼。鬼でもひょうきん顔でここまでやれば主役になれる。 そして阿修羅様。少年のような、少しさみしげな前顔。 ところどころ損傷が見られるのが、なんとも痛ましい限りだ。 他にもたくさんおられて、拝観料以上の見ごたえあります。
 北円堂 ここはね、何もかもが最高に完璧でした。仏の精巧さといい、空間のまとまりといい、 すごいとしか言いようがないです。ライトの当て方も悪くないと思う。 北円堂の中だけで、ひとつの世界できちゃってますって感じで、 入ったとたん、どこでもドアで別世界来ちゃったかと思うほどです。 無着・世親両菩薩像。人型の像でこれほど強烈な印象を受けたのは今までになかった。 目がどうしてもすぐにひきつけられて、離せなくなります。 さらに弥勒如来坐像。これもまた傑作でした。 まさに運慶さん、仏造って魂入れまくりだ。 当時、仏像をうまく造る人は何人もいただろうけど、 その中でも郡を抜く実力派だったろうをしのばせる。必見の価値ありです。

さわやかな朝の奈良公園を歩く

新薬師寺の主?


三月堂から大仏殿に向かう途中で

大仏殿内は撮影可!



●奈良見仏小話

奈良公園を囲む道路を運転して帰る途中、信号が青なのに前の車が動かない。 「はて?」と思って良く見ると、奈良公園の鹿が道路に飛び出していた。 鹿もなんだか来てはいけないところにに来ちゃったぞという感じで、 おろおろした表情をしていた。確かに「鹿飛び出し注意」の標識はあるけど、 まさか本当に出てくるとは。


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