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***** 第6日(6月19日) *****

 バスでヴェネツィアに向かう。添乗員さんを入れても9人のツアーだが、バスが大型なのでそれぞれ好きな席にゆったりと座ってドライヴを楽しむ。トスカーナ地方の豊かな自然を楽しみながら北を目指す。バスのドライヴァーさんを教師にイタリア語ミニ講習。Rの発音がものすごい巻き舌でとても真似できない。

ヴェネツィア

 リベルタ橋を渡ってヴェネツィアの町に入る時は映画『旅情』の光景そのまま。水上タクシーでキャナル・グランデを滑るようにホテルに向かう。水面は夏の日差しを受けてキラキラ光り、運河の両側には実に様々な優雅な建物が立ち並んでいて、私たちはただ歓声を上げるばかり。窓辺にきれいな花を飾っていたり、繊細なレースのカーテンが架かっていたり、本当に夢の中のような光景だ。うっとりと見とれている間にホテルの船着き場に到着。

 DANIELI HOTEL はロビーがこれまで見た来た中で一番豪華だ。大理石の柱がたくさん立っていて素晴らしいシャンデリアがいくつも下がっている。チェックイン後、すぐ近くのレストラン PRINCIPESSA で昼食。さんさんと降り注ぐ夏の日差し、青く光る海、いろいろな言葉でしゃべりながら行き交う世界各地からの観光客、テーブルに集まってくる小鳥たち、まるで別世界にいるようだ。イカ墨のパスタでお歯黒になってしまったがさすがにまったりと美味しかった。

 午後から観光。ドゥカーレ宮殿はこれでもかというばかりに贅を尽くした内装や天井画の額縁にみんな口をポカンと開けて見とれる。ヨーロッパの富は本当に桁外れだ。ため息をつきながらため息橋を渡り、牢獄の中にも入ってみる。
そしてサン・マルコ寺院。ロマネスク・ビザンチン様式とのことで、ファザードのモザイクが素晴らしい。内部の床は地盤沈下のため波打っているのが良く分かる。床のタイルの色合いがなんとも言えない素晴らしさだ。金箔やモザイク、ステンドグラスで豪華絢爛。建設当時のヴェネツィアの経済力が偲ばれる。ステンドグラス工房を見学した後自由行動になる。

サン・マルコ広場(ガイドブックより)
ドゥカーレ宮殿の中庭 DANIELI HOTEL のロビー

 夕方6時ごろからゴンドラクルーズ、主人はパスしたので他のご夫婦と三人で乗り込む。初めは結構揺れたが小さなrioに入ると殆ど揺れない。岸辺ではレストランが営業しているかと思えば廃屋になっている建物もある。ゴンドリーナの歌声を楽しみながらヴェネツィアの街を表から、そして裏から眺める約40分のクルーズだった。

 ホテルのテラスレストラン TERRAZZA で夕食。夕焼けからだんだん暮れていく海やドゥカーレ宮殿の眺めがため息の出るような美しさだ。

***** 第7日(6月20日) *****

 今日も朝早くホテルを抜け出して散歩する。朝日を浴びて光る海、輝く教会、ゆらゆら揺れている無人のゴンドラ、さわやかな風の中をゆっくり歩いて回る。サン・マルコ広場にもほとんど人影がない。どこまでも青く澄み渡った青空の下で白い教会や青い海を眺めながらテラスレストランでゆったりと豪華な朝食を取る。

早朝のサン・マルコ広場

 水上タクシーで駐車場のある広場に行き、バスでヴェローナに向かう。

ヴェローナ

 小高いサン・レナルドの丘から旧市街を見下ろす。S字型に流れるアディジェ川が自然の要塞になってこの美しい街を2千年以上の間守ってきたそうだ。歴史的な建物はもちろん車窓から眺めた普通の家もきれいに手入れされていて、町全体が落ち着いた雰囲気の感じのよい都市だ。ロミオの家、ダンテの像が建っているシニョーリ広場、紋章の格子とゴシック様式の天蓋が印象的なスカリジェレ家の廟、たくさんの店が出ているエルベ広場を見てジュリエットの家に行く。遠足の子供たちなどでにぎわっている。ジュリエット像の胸に触ると幸せになると云い伝えられていて皆が触るのでツルツルピカピカになっている。

 1世紀末に造られた古代ローマ最大の円形劇場アレーナはとても保存状態が良く、今でも毎年夏にはヴェローナ音楽祭が開かれているとのことだ。今年はヴェルディの没後100年に当たり、オペラ上演の準備をしている。

アレーナの内外
ランベルティの塔 ダンテの像

 ブラ広場の近くのレストラン SCALIGERO で昼食。バスがミラノに近付くにつれ車窓からの眺めからイタリアらしさが薄れ、どこにでもある都市の風景になっていく。

ミラノ

 さすがに近代的な大都会で高いビルが立ち並び車が渋滞している。ホテルは駅とは思えない荘重な感じのするミラノ中央駅のすぐそばにある EXCELSIOR GALIA HOTEL 。ホテルのレストランで夕食。リゾットがとても美味しい。

***** 第8日(6月21日) *****

 市内観光はまずレオナルド・ダ・ヴィンチの銅像が建っているスカラ広場から始まる。オペラの殿堂スカラ座の外観は意外と質素だ。ヴィットリオ・エマヌエーレ・二世のガッレリアを通ってドゥオモ広場へ。ガッレリアのガラスの天井に近いところにきれいな絵が描かれているが、想像していたより規模が小さい。ちょっとこぎれいなアーケードといった感じだ。

ヴィットリオ・エマヌエーレ・二世のガッレリア ガッレリア入口

ドゥオモはさすがに壮大でかなり離れないと全景の写真は撮れない。内部は暗くて教会らしい荘厳な感じがする。
 

ドゥオモの尖塔

 バスでサンタ・マリア・デッレ・グラッツェ教会へ。教会そのものの建物には入らず、すぐそばにある修道院の食堂で「最後の晩餐」を見る。厳しい入場制限で十数人ずつエアシャワーを浴びて時間も20分に限られる。昔の美術の教科書で見たのよりずっと淡い色使いだ。キリストの右隣に座っている弟子がとても優しい表情をしていて、本当に男性なのだろうかと思う。スフォルツェスコ城の前で写真を撮る。大阪で久しぶりに日本食の昼食。

修道院の入場券 スフォルツェスコ城
ミラノ中央駅 スカラ座


 午後は自由行動になりドゥオモの屋上に上る。エレベーターがあると聞いていたので気楽に昇ったが、エレベーターは途中までで階段が結構あってしんどい。午後の日差しが容赦なく照りつけるし、大理石の屋上は照り返しがきつくてふうふう言うくらい暑い。135本の尖塔と2245体の彫刻で飾られているとのことだが、暑さには勝てずさっさと降りることにする。隣にあるデパート LA RINASCHENTE やガッレリアなどで買い物をしてホテルに戻る。

 夕方7時半ごろからバスで食事に出かける。GIANNINO EREA は入口は小さいけれど、ガラス越しに調理場を眺めながら奥に入るとパテオ風に席が作られていて広い。廊下にはエヴァ・ガードナーやジョージ・クルーニーなどの有名人の写真がたくさん飾られている。花瓶その他のインテリアも素敵で食器も上等だ。カメリエーレ(給仕人)がとても感じが良く、英語でメニューの内容を一つ一つ丁寧に説明してくれる。今日はそれぞれ自分の好きなものを選べるのでうれしい。料理はどれもとても美味しくて大満足。

***** 第9日(6月22日) *****

 最後のイタリア早朝散歩。といっても帰国する日に事故を起こしては大変なのでミラノ中央駅前の広場だけだ。

KL 1620便 11:10発 今日もすっきりとした青空で眼下にすばらしいアルプスの景観が広がる。2時間弱でオランダのアムステルダムに到着。

KL 861便が1時間遅れで15:50離陸。

***** 第10日(6月23日) *****

 朝8時40分曇り空の成田空港に無事到着。

 この上ない好天気に恵まれ、大理石の美しさを堪能できたし、数々の美術品は出発前にビデオで予習していたとはいえ実物に接する喜びは又格別のものがあった。「永遠の都」ローマ、ルネッサンスの息吹を体感したフィレンツェ、「それでも地球は動いている。」のピサ、しっとりと美しいヴェローナ、そしてカッコいいビジネスマンが闊歩していたミラノ、それぞれにその街独特の魅力があって忘れがたい旅になった。

(終り)