2000年6月14日から4組の熟年夫婦で8泊10日のイタリア旅行をしました。

(1)

***** 第1日目(6月14日) *****

 KL 862便   10:25 出発。12時間弱でオランダのアムステルダム到着。
 KL 1605便 16:35 でローマへ。約2時間のフライト。

ローマ

 フィウミチーノ空港で両替、2万円が348,480リラ。添乗員さんが私に「悲しいお知らせがあります。」というので高齢の両親に何事かとびっくりしたが、スーツケースがひどい壊れ方をしている。とりあえずKLMオランダ航空に保障の書類を作ってもらって BERNINI BRISTOL HOTEL へ。日が長いので車窓から街の様子がよく見えるが、建物が落書きだらけだし、なんだかごみごみしていて意外と薄汚い感じがする。

***** 第2日目(6月15日) *****

 早朝に目が覚めたが主人から「イタリアでは一人歩き禁止!」と言われていたので、ホテルの前の道を少しだけ歩く。バルベリーニ広場のトリトーネの噴水を眺めたりショーウィンドウを覗いたりする。

 小型のバスで市内観光。まずヴァチカン博物館。アメリカの客船が着いたとのことで、すでに長い行列が出来ている。歴代の法王のコレクションと云うだけあって膨大な美術品だ。中でも紀元前1世紀の「ラオコーン像」、ラファエロの間の「アテネの学堂」などが印象深い。そしてシスティーナ礼拝堂でかの有名なミケランジェロの「最後の審判」に対面する。1990年から始まった修復が終わって実に色鮮やかだ。世界各地からの観光客で大混雑の中、運良くベンチに座れたのでゆっくりと双眼鏡で鑑賞する。

アテネの学堂 最後の審判

 そのままサン・ピエトロ寺院に移動。その巨大さ、壮麗さにただただ圧倒される。楽しみにしていたミケランジェロの「ピエタ像」は薄暗い大聖堂の中で本当に美しい。マリアは清らかな乙女のような、それでいて母性を感じさせる実に優しい表情をしている。真っ青な青空を背景にサン・ピエトロ広場から眺める寺院の姿は実にすばらしい。

サン・ピエトロ寺院内部(パンフレットより)
ピエタ(ガイドブックより)
サン・ピエトロ寺院

 街中のレストラン ARMAMDO'S で昼食。さすがに本場のパスタは美味しい。

 炎天下のコロッセオ見物は結構しんどい。5万人も収容できるとのことで、4階建ての巨大な競技場だ。猛獣の檻などが置かれていたと云う地下も想像以上の深さだ。コンスタンティヌス帝の凱旋門とコロッセオをバックに写真撮影をして、フォロ・ロマーノはバスの中から見物する。ギリシアで見た景色に良く似ている。夾竹桃の大木の薄いピンクの花が満開。

 サンタ・マリア・イン・コスメディン教会の「真実の口」の前で4組の夫婦がそれぞれ「ローマの休日」を思い出しながら写真を撮る。教会のステンドグラスがとても美しく、中はひんやりとして涼しいのでホッと一息。

 観光客でいっぱいのトレヴィの泉で一休み。肩越しにコインを投げ入れたが再びローマを訪れる日があるだろうか。2000年の記念行事で大掃除をしたのか観光名所はどこも建物が磨かれて白い大理石が輝いていた。

コンスタンティヌス帝の凱旋門とコロッセオ トレヴィの泉

 4時ごろホテルに戻ってみんなは休憩したが私は添乗員さんと二人で壊れたスーツケースを抱えてタクシーでKLM指定の鞄屋へ。電話連絡がうまくいかなかったり、イタリアらしいいい加減さがあったり、なかなかスリリングなやり取りがあって結局素敵なスーツケースが手に入って一安心。地図で見るとホテルからそう遠くないのでスーツケースをゴロゴロ転がしながら国立絵画館の前を歩いて帰る。好奇心の強い私には結構楽しいひと時だった。

壊れたスーツケース 弁償してもらったスーツケース

 8時にホテルのルーフレストラン L'OLIMPO で夕食。料理のどれも美味しかったが、夕焼けに浮かんだ遠くの教会の屋根や次第に暮れていくローマの街並みを眺めたのが一番のご馳走だった。

***** 第3日目(6月16日) *****

 今日は1日自由行動なのでタクシーでまずカンポ・ディ・フィオーリへ。10,000リラ。八百屋、魚屋、そしてもちろん花屋などたくさんの店が出ていてにぎやか。魚屋が様々な魚を実にきれいに並べている。ヨーロッパの市場もいくつか見たけれどこんなに綺麗に魚や野菜を並べているのは初めて見た。その後はひたすら歩く。

 ベルニーニ達の彫刻で飾られた四大河の噴水、ネプチューンの噴水、ムーア人の噴水のあるナヴォーナ広場にはたくさんの絵描きが店を出している。パンテオンは床面の直径も高さも約43mという壮麗な建物で、中にはラファエロの墓やイタリア王国初代国王、ヴィットリオ・エマヌエーレ二世の墓などあって制服姿の兵士がしっかり警備している。「受胎告知」の絵や彫刻などがたくさん飾られている。

 地図を見ながらスペイン広場まで歩く。何しろ暑いし、ものすごい人出で「ローマの休日」をゆっくり味わうような気分ではない。階段を昇りきったところにあるトリニティ・ディ・モンティ教会のところからはローマの街並みを見下ろせてとても良い眺めだ。

パンテノンの受胎告知 ナヴォーナ広場
スペイン階段

 午後は昼休みなのだろう通りに面した店は殆どシャッターを下ろしている。ヴェネト通りのカフェ CIAO BELLで昼食。 主人は疲れたからでホテルで休むと云うので一人で出かける。イタリアは治安が良くないとのことなので、さすがの私もヴェネト通りを往復しただけ。それでも通りの両側にはとても立派なアメリカ大使館や、高級ホテル、骸骨寺などが並んでいてなかなか面白かった。映画『甘い生活』に出てきたCafé de Parisでしっかりアイスクリームを食べて満足。

 夕食はローマ郊外のレストラン TANAGRA でカンツォーネ・ディナー。食事はあまりおいしくないし、残念ながら言葉が全然わからないのでちょっと退屈。でも帰りのバスから眺めた夜のローマの街はとてもきれいだった。

***** 第4日目(6月17日) *****

 テルミニ駅からユーロスターでフィレンツェに向かう。改札口らしいものはなく日本の駅とは感じが違う。映画『終着駅』のしっとりとしたイメージはない。念願の外国における初めての鉄道の旅だったが、一等車といっても残念ながらコンパートメントではない。車窓から時々小高い丘の上に教会を中心にした町が見え、緑の中の赤い屋根がとても美しい。約1時間45分くらいでフィレンツェに到着。

フィレンツェ

 駅の近くにあるレストラン LA VELA で昼食を取った後、徒歩で観光する。いかにも古い歴史が刻まれているという感じの街並みをゆっくり両側を眺めながら歩く。共和国広場を通りぬけて街角を曲がると突然目の前に夏の光を浴びて輝いているジオットの鐘楼が現れる。ドゥオモ(花の聖母教会)、サン・ジョヴァンニ洗礼堂と共に、白、ピンク、グリーンの大理石が言葉に表せないほど美しい。

  洗礼堂             ドゥオモ         鐘楼


 たくさんの土産物屋が出ているシニョリーナ広場を通ってウフィッツィ美術館へ。待たずに入れると云うのがこのツアーの売り物だったが、やはり30分くらいは待たされた。でも建物の周りにたくさんの彫刻が巡らされているので、それを見ているだけでも退屈しない。何しろ膨大な数の美術品が展示されているので、目玉中の目玉の作品だけを駆け足で見て廻ることになる。まず三つの聖母子像、正面の壁にジオットの「オンニッサンティの聖母]、左の壁にドゥッチョの「玉座の聖母子」、そして右の壁にチマブーエの「荘厳の聖母」が架かっている。ドゥッチョのマリアが一番優しい表情をしていて私は好きだ。

ドゥッチョ ジオット チマブーエ

ボッティチェリの「春」、[ヴィーナスの誕生」はやはり本当に美しい。作品の中には世界各地の美術館に出張していてレプリカが飾られている物もいくつかある。少しだけ自由時間があったのでテラスにも出てみる。ヴェッキオ宮殿が目の前にあって、壁面を飾った紋章など良く見えた。高い青空にドゥオモのレンガ色のクーポラがが映えて、「アア、私は今本当にイタリアにいるのだ!」としみじみ思う。
 旅行社指定の土産物屋で買い物をしてからHOTEL VILLA MEDICI へ。ロビーがとても素敵だ。プールサイドのレストランで夕食。背の高い木々と色とりどりの花々に囲まれて優雅なディナーだった。ヨーロッパの夏は日が長く9時くらいまでは明るくて涼しく気持ちが良い。

ヴェッキオ宮殿 HOTEL VILLA MEDICI のロビー

***** 第5日目(6月18日) *****

 9時にバスで出発してピサに向かう。広い駐車場からシャトルバスでドゥオモ広場まで行く。緑の芝生に白いドゥオモ斜塔礼堂が美しい。斜塔の修復工事が終わって来年くらいから又登れるようになるとのこと。修復されたと云っても結構傾いている。

ピサの三点セット

 フィレンツェに戻りミケランジェロ広場で記念撮影。フィレンツェの街並みを見渡すことが出来て、とても眺めが良い。パンフレットでよく見かける景色だ。
 CHINA TOWN で昼食後自由行動。ドゥオモの中は意外とシンプルだ。人ごみの中をポンテ・ヴェッキオまで歩く。アルノ川に架かった橋で道の両側に貴金属店などがずらーと並んでいて、自分が歩いている時は普通の道と変わりはない。ただ真ん中あたりで店が途切れていて川の流れが見える。
 主人は又先にホテルに戻ったので、一人歩きを楽しむ。ピッティ宮殿の前まで行ったが、残念ながら今日は月曜でパラティーナ美術館には入れない。共和国広場のレストラン GILLI で一休み。フレッシュジュースを飲みながら行き交う人々を眺める。海外旅行での私の一番お気に入りの時間。本当に様々な人種の人たちが様々な言葉をしゃべりながら歩いている。
 街中のレストラン CROLE AL TREBBIO でトスカーナ料理の夕食。ただ狂牛病騒ぎで名物のフィレンツェ風ステーキが出なくて残念。

(続く)