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* * * * * * 第5日目  7月28日 * * * * * *

 娘を無理やり起こして朝食前に散歩。町をぐるっと取り囲んだ城壁を約40分で一周する。きちんと整備されているので歩きやすい。カテドラルが開いていたので中に入れていただく。ステンドグラスと壁や聖歌隊の椅子の彫刻などが素晴らしく時の経つのを忘れる。

カテドラル 荘厳なカテドラルの内部


 スト-ク・オン・トレントにあるウェッジウッドの工場へ。工房の歴史を伝えるビデオを見たり、絵付けや飾りの花を作る工程を見学する。もちろん私達を含めてほとんど全員が何か記念品を買い求めていた。

 バスに2時間揺られてストラトフォード・アポン・エイヴォンに到着。中世のチューダー様式の家並みが美しい街で、街角のあちこちに色とりどりの花々が飾られている。世界中からの観光客が集まっていてとても賑やかだ。

シェークスピアの生家
 天井が低く小さな部屋ばかりだ。ゆりかごまで置かれている。分厚い壁の構造が分かるように壁の一部を切り取って展示している。この質素な家で天才はどんな少年時代を過ごしたのだろうと想像を膨らませる。

ホーリー・トリニティ教会

 13世紀にエイヴォン河畔に建てられた教会で、シェークスピアが洗礼を受け、今は家族と共に静かに眠っている。

意外に明るい感じのするすっきりとした建物でステンドグラスがとてもいい雰囲気を出している。

英国人のガイドの話だとここで結婚式を挙げる日本人のカップルがたくさんいるとのこと。

アン・ハザウェイの生家
 シェークスピアの妻、アン・ハザウェイの実家が当時の姿のまま保存されている。茅葺き屋根の素敵な家だ。シェークスピアより8歳年上で、妊娠後結婚したそうだが、天才の妻というのはずいぶん苦労が多かったろうなどと余計な事を考えた。

その隣にある The Thatch(茅葺き屋根) といういかにもぴったりの名前のついたレストランでアフタヌーンティーを楽しんだ後、Moat House International Hotel にチェックイン。あとは自由行動なのでシェークスピアという名前の付いたホテルをのぞいたり、エイヴォン河のほとりに建つロイヤルシェークスピア劇場を眺めたりする。真夏にもかかわらず夕方になるとかなり肌寒い。小さなカフェのアイリッシュコーヒーで温まってからホテルに戻る。

* * * * * * 第6日目  7月29日 * * * * * *

 朝食前に河沿いにある美しく手入れされた公園を散歩。河には細長い観光船がたくさん浮かんでいる。今日も素晴らしい青空だ。娘が毎朝 “Oh, what a beautiful morning !”(ミュージカル「オクラホマ」の主題歌) と歌う。今日は憧れのコッツウォルズ行きだ。

チッピング・カムデン
 13世紀から羊毛取引の中心地として栄えた町で、はちみつ色と呼ばれる薄茶色のライムストーンを積み上げた家並みが朝の光の中でしっとりと美しい。どの家にも夏の花々がきれいに咲いていてため息が出るような景色だ。17世紀に建てられたマーケットホールが今もどっしりと町の真ん中に立っている。
 早朝のためか観光客の姿がほとんどなく静かなたたずまい。娘は自分の生まれた年のコインを買ってご機嫌だ。

ボートン・オン・ザ・ウォーター
 街の中を小川が流れて花がいっぱいの美しい街。添乗員さんのお薦めでモデルヴィレッジへ。村全体を忠実な縮尺で再現した石造りの模型。その中をそっと歩くとガリバーになった気分がする。すぐ近くのカフェでティータイム。本物の English Garden で飲む紅茶は格別の味だ。

バイブリー
 ウィリアム・モリスに「イギリスで一番美しい村」と呼ばれたとのことで、本当に静かで心安らぐ村だ。名物のマス料理の昼食をとったあとは自由に散策する。時が止まったようなどこか懐かしい風景をただ黙って心に刻む。


カッスル・クーム
 駐車場から村の中心まで下り坂を20分近く歩く。他の観光客にもほとんど出会わず、ひっそりと静かな村をそれぞれ自分のペースで味わうとても贅沢なひとときだ。17から18世紀に建てられた家並みがほとんどそのまま残っているようだ。

バイブリー
カッスル・クーム チッピング・カムデン

 バースに到着して The Francis Hotel にチェックイン後、郊外のパブで夕食。パブという言葉から想像していたよりずっと大きな規模のレストランだ。イギリスの南部に来たためか夕日がとても暑い。エアコンもなくみんなで大汗をかく。日没が9時ごろなので我々の夕食の時間には夕陽が赤々と射しているのだ。
夜娘と二人でバース寺院まで行ってみたが、ライトアップされた寺院は怖いくらいの美しさを放っている。

* * * * * * 第7日目  7月30日 * * * * * *

 今日も朝食前の散歩から始まる。重厚な雰囲気のギルドホール、エイヴォン川にかかるパルティニ橋など興味深い眺めだ。この橋は両側に商店が並んでいるのでうっかりすると橋であることを忘れてしまう。

上がロイヤル・クレセント、下がザ・サーカス

 朝食後、まず徒歩でロイヤル・クレセントへ。広々とした美しいロイヤル・ヴィクトリア公園に面して立つジョージア王朝式の優雅な建物で、三日月の形に弧を描いている。18世紀の上流階級の住まいだったとのことだが、現在では三日月の真ん中は高級ホテル、右端は博物館、その他は個人の住居になっている。
次は建物が円を絵描いているザ・サーカス
この二つの建物はジョン・ウッド親子が二代にわたって完成させたもの。
1階がドーリア式、2階がイオニア式、3階がコリント式とそれぞれ異なるデザインで構成されている。

現地で買ったガイドブックより

ローマ浴場跡
 1世紀に古代ローマ人が作った広大な浴場跡。それぞれオーディオガイドで説明を聞きながら見学する。今でも毎日125万リットルの湯が湧き出ているとのことだが、水は緑色をしていて入浴することはできない。(1999年)
バース寺院
 中世に建てられた英国ゴシック様式の壮麗な教会。西側の壁には天使が天国への階段を上っている彫刻がある。落ちかけている天使もいて笑ってしまう。

昼食のサラダに久しぶりの生野菜が出て全員感激。(これまでどうしてこんなにまずくして食べるのかと思うほどくたくたに茹でた野菜ばかりだったので)
バスで1時間半揺られて
ソールズベリーへ。

ソールズベリー大聖堂
 ドイツのケルン大聖堂に次ぐ高さの塔に圧倒される。日本語の説明書をもらってそれぞれ自由にで見て回る。
マグナカルタ(大憲章、1215年に制定されたもので近代民主主義の原点とされている)の原本が展示されている。「未亡人は自分が夫を持ちたいと思わない限り再婚を強制されない。」という条項があり、さすが大英帝国ではこんなに昔から女性の人権が保障されていたのかと感心する。実情はともあれ…

ソールズベリー大聖堂 素敵なステンドグラス

ストーンヘンジ
 巨大な石の謎の遺跡。現在残っているのは約3600年前に建てられたものだという。円形に並べられた石柱の上に横石を置かれたものもある。太陽崇拝に関係があるとされているがやはり謎に包まれている。
広い野原に巨大な石があるだけなので、かなり離れた所からでも見えるが、ちゃんとロープを張って入場料を取っているのが面白い。

ストーンヘンジ(ガイドブックより)

 ン十年前の卒論のテーマが Thomas Hardy だったので、このツアーでウェセックスを訪れるのをとても楽しみにしていた。彼のたくさんの小説の舞台となったこの土地に実際に立って感無量。
 夕方6時半ごろ
ロンドン Stakis Stermin's Hotel に到着。チェックイン後バスで和食レストラン「サントリー」へ。とても素敵な店でサーモンやロブスターの鉄板焼きなど豪華版でみんな大満足。ツアー最後の夕食はいつも豪華、「終わり良ければすべて良し」ということだろう。
 9時半エンバンクメントの船着場からテムズ川ナイトクルーズを楽しむ。ライトアップされた国会議事堂は息を吞むような美しさ。英語、フランス語、スペイン語の説明を聞きながら河の両岸の建物をと歓声を上げてキョロキョロ眺めるばかり。残念ながら言葉はほとんどわからないけれどとにかく眺めは素晴らしいの一言。タワーブリッジを過ぎてから引き返す。ロンドンの夜景を堪能した一時間だった。

タワーブリッジ

* * * * * * 第8日目  7月31日 * * * * * *

 今日は一日中フリー。まず10分くらい歩いて国会議事堂へ。名高い時計塔ビッグ・ベンなど見上げながら夜景のほうが素敵だなと思う。ツアーの悲しさ、時間がないので外から眺めるのみ。

ロンドンプライドのバスで日本語のガイドテープを聞きながらロンドンの街をめぐる。

セント・ポール大聖堂
 604年に建てられて以来火事などで焼失、修復を繰り返し現存するのはクリストファー・レンが1710年に完成させたものという。とにかく壮麗。高さ110メートルのドームのステンドグラスを見上げると首が痛い。
またバスに乗りタワーブリッジを渡って車窓からロンドン塔を眺める。たくさんの悲惨な歴史を刻んだ建物だ。

ロンドン塔

ウェストミンスター寺院
 英国ゴシック建築の傑作といわれるだけあって、その規模と言い、その壮麗さと言い圧倒的な美しさにクリスチャンではないにもかかわらず自然と祈りをささげたくなる。薔薇窓のステンドグラスを通して射してくる光がなんとも言えない輝きをもっている。現女王エリザベス二世の戴冠式が行われた教会だ。ちゃんと日本語のパンフレットも置かれている。

 ロンドン名物ダブルデッカー(二階建ての赤いバス)に乗って繁華街のナイツブリッジへ。ガイドブックで見つけていた小さなホテル、Capital Hotel のレストランで昼食をとる。私たち母娘以外にはイギリス人らしいカップルが一組だけ。きゅうりのスープ、フォアグラ、ラムロースト、リゾット、サマーベリーのアイスクリーム、コーヒーと皆ほっぺたが落ちそうなくらいおいしくて食いしん坊母娘は幸せ。

 夕方からオルドウィッチ劇場でミュージカルを見る。娘が日本で予約していたもので“Whisle down the Wind” という聞いたことのない演目だ。ストーリーは単純だけれどダンスシーンやバイクが走り回るシーン、二重構造の舞台などめずらしく、また幕間にワインを楽しんでいるお洒落をした人々を眺めたり思い出に残るひとときだった。帰りは黒い箱形のタクシーに乗ったが乗り心地はあまり良くなかった。

 さすが紅茶の国だけあってこのツァーでは泊まったホテルすべてにティーセットとおいしいクッキーが用意されていた。翌日の準備を済ませた後、紅茶を楽しみながら娘と夜遅くまでゆっくりおしゃべり出来たのはとてもうれしかった。

 * * * * * * 第9日目  8月1日 * * * * * *

 朝食後ランベスブリッジまで約1時間散歩する。ヴィクトリア・タワー・ガーデンが朝の光の中でとても美しい。ヒースロー空港はバカンスの人々でごったがえしていてものすごく暑い。
13:00発 VS900便で帰国の途へ。

 * * * * * * 第10日目  8月2日 * * * * * *

 約11時間のフライトで成田着。私たちの座席のTVが故障していたのでお詫びにと言ってそれぞれ25ポンドずつのプレゼント、オードトワレをもらう。
 好天に恵まれ本当に素晴らしいイギリスの旅だった。少女のころから憧れた様々な小説の舞台を娘とともに廻ることができて幸せな10日間だった。 すべてにありがとう。