イギリス文学を訪ねて

 1999年娘と二人で 「ピーター・ラビットの湖水地方と歴史と伝統が薫るイギリスの旅10日間」 というツアーに参加しました。

(1)

* :* * * * * 第1日目  7月24日 * * * * * *

 夏休みに入って成田空港はすごい混み方だ。
VS 901 11時00分発。約12時間のフライトでロンドンへ。ヒースロー空港で BM 064 乗継ぎ、エディンバラへ。約1時間のフライトだが軽食が出る。アイスティーを頼んだらスチュアードが奇妙な動物でも見るような顔をする。冷たい紅茶なんてイギリスでは考えられないのだろう。
バスで郊外にあるRoyal Scot Hotel へ。22時30分チェックイン。


 
* :* * * * * 第2日目  7月25日 * * * * * *

 エディンバラの朝は空気が澄んで気温が低くキリッとしている。
ソーセージ、ベーコン、スクランブルエッグ、目玉焼き、カリカリトースト、シリアル、そしてスコットランド名物ハギスの朝食。残念ながらコーヒーはおいしくない。
9時からバスで市内観光。スコットランドの歴史、ジョージア王朝様式建物の説明etc.元気なガイドさんの話がとても面白い。窓の大きさによって税金がかかっていたとのこと。

スコット記念塔
 スコットランドを代表する作家、ウォルター・スコット卿を記念したゴシック様式の塔で、プリンスズ・ストリートにそびえ立っていて目を引く

カールトンヒル
見晴らしのよい高台で、旧天文台と大砲台、ギリシアを思わせる石柱の並んだナショナルモニュメント、ネルソン提督の記念碑などの説明を受ける。風がとても冷たくて娘は冬のコートまで着込んでいる。

カールトンヒルからのエディンバラの街の眺め

ホリールード宮殿
 現在でもエリザベス女王が夏に滞在するとのこと。他のヨーロッパの華麗な宮殿と違って、豪華絢爛といった趣がなくいかにもイギリス的な感じがする。中庭にも花がきれいに飾られている。
スコットランド女王メアリーの夫が彼女の寵愛する秘書を殺害した現場が残されていて、床の色がそこだけ違っている。女王のベッドなど小さいのに驚く。教会の跡地が興味深い。

朽ちた教会の跡

エディンバラ城
 

断崖の上に突き出た堅固な城砦で、スコットランドの王冠が今も保管されている。
城門の前の広場にミリタリー・タトゥ(8月に3週間も行われる一大パレード)用の席を設営中で、鮮やかなブルーのシートが古色蒼然としたお城とちぐはぐな感じだ。
様々な人種の観光客が行きかう中をバグパイプの哀愁を帯びた音色が流れていく。
門衛はもちろんタータンチェックのキルトを身に付けている。
ガイドから城内の見どころの説明を受けてそれぞれ自由に見学。
「お城」と聞いて私たちがイメージする建物とはずいぶんに違っていて、大規模な武器の倉庫など「要塞」といった趣である。
小さな礼拝堂のステンドクラスがとてもきれいでいい雰囲気だった。
団体旅行の宿命で時間制限があり、ガイドブック片手に広い場内を駆け回った。

 エディンバラ城から緩やかな石畳の坂を下ると、R.L. スティーブンソンの「ジキル博士とハイド」のモデルになった牧師が住んでいたという路地(ブロディズ・クロウス)が見える。 

ナショナルギャラリー(国立スコットランド美術館)
 昼食後は自由行動になり、まずこの美術館に足を運ぶ。真紅の壁面がものすごく高くて上のほうの絵を見上げると首が痛くなるほど。エル・グレコの「救い主」が印象的だった。

 The Balmoral Hotel のラウンジで期待のアフタヌーンティーを楽しむ。落ち着いた雰囲気の素敵な内装だ。木製の三段のトレーにサンドイッチ、ケーキ、スコーンが運ばれてくる。ウェイトレスがとても感じの良い女性だ。ツァー仲間も何組か来ていて、約30分のハープの生演奏を楽しみながら優雅なひとときを過ごす。

セント・ジャイルズ・カテドラル
 古くて雰囲気のある教会で、ステンドクラスや重厚な祭壇の彫刻が素晴らしい。夕方からコートマン夫妻のパイプオルガンとフルートの演奏を聴く。あまり馴染みのない教会音楽だがその素晴らしい響きに圧倒される。

ライトアップされたセント・ジャイルズ・カテドラル

Royal Cafe Oyster Bar で遅い夕食。ロブスターやスモークサーモンなど素晴らしい味で、食いしん坊の私たち母娘がこの店を苦労して探した甲斐があった。

目も口も耳も楽しんだところで9時半ごろバスに乗り、夕焼けに映えるエディンバラの街の素晴らしい眺めを堪能しながらホテルに帰る。
 エディンバラは濃い灰色のくすんだ建物が多く地味な感じがするが、その分気持ちがとても落ち着く。

夕映えのエディンバラの街
夕日に染まるエディンバラ城

* :* * * * * 第3日目  7月26日 * * * * * *

 今朝も素晴らしいお天気で澄んだ青空が広がっている。ただ風は少し肌寒い。ホテルの庭で野生のウサギが遊んでいる。
 バスで
湖水地方に向かう。スコットランドとイングランドの国境(?)の街、グレトナ・グリーンで40分休憩。おとぎ話のような小さなかわいい店が集まっている。

ビアトリクス・ポター・ギャラリー
 

世界的に有名な絵本「ピーター・ラビットのお話」を書いたビアトリクス・ポターの生涯の紹介があって、「ピーター・ラビット」の原画や家具などが展示されている。

ヒルトップ
 ビアトリクス・ポターの農場が彼女の生前そのままの姿で残されている。夏の草花が咲き乱れていて,今にもピーター・ラビットが飛び出してきそうだ。家は天井が低く質素だが暖かみがある。湯沸かしのついたストーブのある台所など興味深く見学する。日本人の観光客が多いのでちゃんと日本語のパンフレットが用意されている。

ウィンダミア湖のそばを通って Wild Boar Hotel に到着。ロッジ風の可愛らしいホテルだ。湖畔にある Low Wood Hotel で夕食をとる。イギリス名物フィッシュアンドティップスが出るが、あまり美味しい物ではない。

* :* * * * *第 4日目  7月27日 * * * * * *

 ウィンダミア湖の湖畔の町ボーネスで自由行動。
45分間のクルージングを楽しむ。抜けるような青い空、白い雲、夏の日差しに煌めく湖水、緑の牧草地、まるで別世界にいるような素晴らしいひとときだった。乗船している観光客は(日本人は私たち親子も含めて10人足らず)静かにゆったりとあたりの景色を楽しんでいるし、日本の観光地のような余計な音楽など一切なし。湖水地方の魅力をそれぞれ自分の五感で心行くまで味わっている。

船上からの眺め ウィンダミア湖


 湖畔のレストランで昼食後、グラスミアに向かう。

湖水地方の典型的な風景

ダヴ・コテッジ
 ウィリアム・ワーズワースがたくさんの詩を書いた家だ。この「ハト小屋」という名前はもともと「ダヴ・アンド・オリーヴ」の看板を掛けた旅籠だった建物にワーズワースが名づけたものだ。
順番を待ち、時間を区切られて見学する。実に質素な建物で、このような環境の中からあの珠玉のような作品が生まれたのだと改めて感動する。

ワーズワースと言えば何といっても
Though nothing can bring back the hour
Of splendour in the grass, of glory in the flower;
We will grieve not、 rather find
Strength in what remains behind;
    “ Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood” より

草原の輝きしとき、花美しく咲きしとき
再びそれは還らずとも 嘆くなかれ
その奥に秘めたる力を 見出すべし

その昔、この詩をモチーフにしたエリア・カザン監督、ナタリー・ウッド、ウォーレン・ビーティー主演の「草原の輝き」という切ない青春映画がありました。年を重ねるにつれてこの詩の持つ意味の深さが身に沁みてきます。

 5時頃チェスターの街に到着。Moat House International Hotel にチェックイン後町を自由に散策する。

チェスターの街並み 市庁舎


中世のハーフティンバーの建物が並ぶ美しい街で、白壁に黒の木組みのコントラストがとても素晴らしい。ローマ人の作った劇場跡やカテドラルの外側だけ見てホテルに戻る。ヨーロッパを旅すると本当にローマ人は至る所に足跡を残しているなと実感する。

(2)に続く・・・