呪的逃走


何らかの方法を用いて、異類のもの等から逃げるモチーフです。日本で記録されている 逃走譚は、古くは「古事記」(イザナギの黄泉国訪問神話)にも見られます。 このモチーフは昔話にも多く用いられるモチーフで、全国的に幅広く伝えられています。

このモチーフを持つ話には「三枚のお札」 「鬼を一口」「耳切り団一」「牛方山姥」「食わず女房」「天道さんの金の綱」 「姉弟と山姥」「鬼の子小綱」等に見られます。 昔話においてこのモチーフが 使われる場合、異類というのは神々が霊落した鬼や物の怪、山姥がほとんどで、 それから逃げ出す方法も様々です。

この鬼や山姥から逃げてきた者を僧侶が呪力によって救うという話が多く、 この話の中で僧侶の占める比重は大きいと考えられます。かつて、これらの昔話 は「語られる理由」がはっきりしていたものが多かったのでしょうが、現在では その「語られる理由」は失われつつあり、「食わず女房」「牛方山姥」 「三枚のお札」の一部や、土地によって五月の節供の菖蒲の由来や、九州地方の 一部で正月に譲葉を飾る理由として伝えられているにすぎません。

この呪的逃走というモチーフは日本だけでなく世界的に分布しており、ほとんどの 民族の口承説話の中に見られます。さらに世界に分布する呪的逃走のモチーフは三つに 細分されていて、

1.呪物が逃走者の身代わりになって返事をする(お札、唾、毛髪など)

2.呪物で障害物を作って逃走する(お札、櫛、鏡など)

3.逃走者自身が呪的に変身して追跡者の目をごまかす(池、畑、教会などに変身)

S・トンプソンの「民間文芸モチーフ索引」では1は「呪物が逃走者に代って返事する」 2は「障害物逃走」3は「変身逃走」とされています。その他にも「主人公の逃亡を助ける娘」 始め多くの話型に見られます。


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