R&D in 2017

川野ゼミナールの学生の研究を
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ゼミナール学生による調査研究2017

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川野克典ゼミナール
2年生 Bチームの研究

決算の早期化の動向
 上場企業は、証券取引所の適時開示ルールに則り、「決算短信」という資料を作成し、四半期単位で決算発表を行っています。


 東京証券取引所では、2007年3月期決算より、本決算の決算短信の期末後45日以内での開示を求め、30日以内発表が望ましいとしました。これにより、企業は決算早期化を進めるようになりました。
 2008年4月から四半期報告制度が導入され、四半期決算短信が開示されるようになり、当初、東京証券取引所ではこの四半期決算短信について、30日以内発表が望ましいとしていました。しかし、金融商品取引法の成立や財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに同実施基準の公表により、2008年度から財務諸表に係る内部統制が強化されたこと、国際会計基準(IFRS)の適用の流れが生じたこと、さらに日本公認会計士協会が決算早期化のために、安易な監査日程の短縮をすることがないように表明したこと等から、東京証券取引所は、四半期決算開示に関する早期開示目標を取り下げ、企業の決算早期化の取り組みにブレーキがかかります。
 しかし、決算発表の見直しは、2015年の「日本再興戦略」改訂2015に盛り込まれ、金融庁の金融審議会が2016年に決算短信の簡素化を柱とする報告書をまとめたことから、東京証券取引所は2017年3月期決算から決算短信の簡略化を認め、決算短信は監査の対象外となりました。この結果、決算短信を早期発表する流れが生まれるかもしれません。
 こうした紆余曲折の結果、決算短信の平均発表日数は、
1992年3月期には72.3日も要していた決算短信の発表が、2003年3月期には45.1日、2007年3月期は40.9日、2009年3月期は39.9日、2013年3月期には38.4日まで短縮されました。その後、若干長くなりましたが、2017年3月期には39.3日まで短縮されています。
 2017年8月17日の日本経済新聞朝刊に決算短信の記載内容の省略化が相次いでいることが掲載されました。トヨタ自動車、旭化成、NTT等の超一流企業も省略化しました。東京証券取引所が省略化を認めたのは、決算短信の早期発表を促すためですが、ほとんど早まっていないと報道しています。

私たちの研究
 私たちは決算早期化と企業の収益性、その結果としての株価への影響を研究します。私たちはPDCA(PlaN-DO-CHECK-Action)という経営管理サイクルと、そのサイクルを速く回転させていけば、問題点の発見、対策の実施が早くなることを学びました。理論的に言えば、決算を早くまとめることで、問題点の発見と対策実施が早くなりますので、その分だけ利益は増加するはすです。その結果、決算早期化を進めることで、企業の収益性が向上するという仮説を立て、この検証を研究テーマとしました。
 このために、私たちは東京証券取引所に上場している3月期決算の企業全てについて、2012年3月期と2017年3月期の売上高、営業利益、決算短信の発表日等を比較し、統計解析することでその仮説の検証につとめています。

 これまで、以下の分析を行っています。

・(発表日の差)と(売上高営業利益率)
・(発表日の差)と(連結営業利益)
・(発表日の差)と(株価)
上記の相関分析を行いましたが、相関はなさそうです。

 上記の分析を受けて、5年前に30日超だったが、現在は30日以内に決算短信を公表している企業をピックアップして、同じ分析を行ったところ、30日以内(2017年)の方が売上高営業利益率が高くなっていました。

 また、単純に2017年30日以内発表と2017年30日超発表企業の売上高営業利益率の平均をとったところ、30日以内の方が高いことが判明しました。

 業種別発表日、売上高営業利益率の平均も分析しています。

 また、決算短信の発表が早い企業、あるいは決算短信発表日を大幅に短縮した企業を訪問し、決算早期化の目的、効果、早期化の方法等についてインタビューしました。その結果、決算短信発表日よりも早い時期に発表できる体制が整っている企業が多く、びっくりしました。それらの企業では、管理会計目的目的で決算を早期化しているようです。加えて、株式会社東京証券取引所の白橋様にもお話を伺いました。


 私たちの研究の結論は以下の通りとなります。

 決算早期化と業績には相関はなかった。
 一方で、30日内開示を実現している企業は相対的に業績が良い。中途半端な決算早期化ではなく、30日以内といった大幅な早期化を実現することにより、業績が向上できる可能性がある。業績は、直接的には、企業戦略の策定と実行、カイゼン計画策定と実行の成果ではある。
 しかし、決算早期化により、PDCAのサイクルが速く回転することにより、計画と実際の差異の是正、実績から新たな計画策定へのフィードバックが早くなることで、適正な計画が策定され、かつ着実に実行されることも業績向上に寄与していると考える。
 私たちは、決算早期化をIR(投資家との関係)目的と考えている企業に対して、PDCAサイクルが速くなり、業績向上に寄与することをアピールし、全ての企業に決算早期化(30日以内発表)に取り組んでもらいたいと考える。
 しかし、決算早期化の阻害要因の存在を口実にして決算早期化を実行しようとしない企業も多い。また、業界単位の横並び体質も無縁ではない。業界内のトップ企業が決算早期化を押し進めると、他の企業も追従する。
 私たちは解決できない阻害要因はないと考える。鉄道会社は、乗車券の鉄道会社間の精算という大きな阻害要因を乗り越えたし、電気会社は関係会社数が多いという阻害要因を乗り越えた。ぜひ阻害要因の解決に取り組み、決算早期化を実現して欲しい。
私たちの研究は、統計的な分析が足らない、阻害要因の解決方法が提示できていない等、様々な課題を抱えています。

論文、ポスター報告資料完成
 これまでの研究の経緯をまとめた論文とポスター報告資料を完成し、日本大学ゼミナール連合協議会に提出しました。


インゼミ大会
 11月23日(木)に行われたインゼミ大会に出場しましたが、決勝大会に進出することはできませんでした。



アカウンティングコンペティション
 12月24日(日)に開催されたアカウンティングコンペティションに出場し、研究を深め、報告の方法を全面的に見直した結果、最優秀賞を獲得致しました。ご支援頂いた皆様に感謝致します。


 アカウンティングコンペティションの資料は、ココからダウンロードできます。

今後の研究
 私たちは、以下の観点から、今後もこの決算早期化についての研究を進めていきます。皆様のご支援をお願い致します。
・決算早期化と業績の関係の本格的統計解析
・アンケート調査を実施して、業界別の阻害要因の調査
・決算早期化の手法のインタビュー調査


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川野克典研究室

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